椿 I -啓蟄-

2024年、啓蟄
椿の花びら染め。
花びらを一枚一枚はがす。
花の中には昼寝をしている虫が1匹、2匹、
お昼寝を邪魔してごめんね、と声をかけながら
起こさないように外の茂みへ。
花びらを鍋にかけて火を通す。
鮮やかなピンク色が一瞬でたおやかな紫色に変わる。
和紙を一枚、また一枚と紫の中へと浸していく。
それは優しく、ふわりとこちらの心を和ませる。
染め上がった料紙を見ると、
青、赤、ピンク、青、青、赤、ピンク、青、と無数の色で
「むらさき色」はできていることをあらためて実感する。
これが草木染特有の「なんとも言えない色」なのだ。

椿の花はまだ寒い春の初めに咲く。
その花びらは寒さに負けまいと力いっぱいに色づき、
着飾り、強がっているようにも感じられるほどに
色鮮やかに咲き誇る。
しかし、その中にはとても繊細で、柔らかい、優しい色を
うちに秘めていたことを知る。
「秘すれば花」
秘めた色や想いは花や人を美しくするのだろうか。
「美しさ」とは、一体なんであろうか。
そんな途方もない問いをいつも心の中に秘めている。
藤井結花
- 2024/3/2
- 草木染